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佐久のアムシネマの会員になると、映画を800円で見ることができると教えてもらい 前回映画を見た時に会員カードを作りました。 特に映画好きというわけではないのですが、800円につられて・・・ 軽井沢は娯楽が少ないので、時々気分転換に映画を見るのも刺激になっていいのでは。 義母のデイケアがある日にMさんと出かけました。 「愛、アムール」はチラシに「パリ、音楽家老夫婦の至高の愛の物語」とあり 監督や俳優の名前もろくに知らずに、なんだかいい音楽も聴けそう、パリの街も 見られるかな・・・フランスの音楽家の老後はいかに、といった興味から見に行ったのですが・・・ 見終わって、あまりの内容の重たさに声も出ませんでした。 内容をチラシから紹介すると パリ高級アパルトマンで悠々自適の老後を送る音楽家の夫婦。 満ち足りた夫婦の日々は、ある日妻の突然の発病で暗転する。 手術に失敗して車椅子生活になってしまった妻の、二度と病院には戻さないでという願いを かなえようと、夫は自宅で献身的な介護を続ける。 その介護の日々を淡々と、時には長すぎると思われるほどの場面構成で丹念に追ってゆく。 次第に妻の病状が悪化し、夫と週何度か頼んでいる看護師だけの介護では 難しい状況になってくる。 その看護師も妻に対して思いやりに欠けるということで解雇してしまい いよいよぎりぎりの切羽詰った状況で夫は衝撃的な行動にでる・・・・ 老老介護の問題は日本だけのような印象を持っていたけれど 他の国でも大変な問題として今現在進行中なのだなと認識を改めた。 映画の中で期待した音楽はほんの僅かしか使われず、音楽によって場面を盛り上げようとか 感情を高揚させようとする意図は微塵も感じられなかった。 それとはむしろ逆で、弟子のコンサートを聴いている場面でも 観客しか写さず音楽もシューベルトの即興曲の最初の出だしだけ。 今や世界を駆け回るピアニストになった、弟子のCDを聴こうと CDをかける場面でも(シューベルトの即興曲)、すぐに聴くのをやめてしまったり 夫がピアノを弾く場面も一瞬あったけれど(バッハの「ich ruf zu dir Herr Jesu Christ/我、汝を呼ぶイエスキリストよ」)、すぐにやめてしまう。 画面に僅かに流れた音楽のうち2、3回繰り返されたのは シューベルトの即興曲で、ひたひたと孤独感が漂う音楽。 映画のエンドロールも音楽なしで、静かに終わった。 老老介護の厳しい現実の前には、音楽も慰めにはならないのか・・・ 音楽がないだけに水道の音やものを食べる音などの生活音が際立つ。 パリの街は一切出てこず、舞台は、100年は経っていそうな パリの古いけれど風格あるアパルトマン エレベーターもなし、水周りの設備は古そうだし、老人が生活するには不便そう。 けれどもそのアパルトマンの部屋は家具調度を含め、なんとも素敵だった。 その空間的余裕が、日本と比較した場合、介護現場の厳しさを いくらか和らげているのではないかと思えた。 登場人物は音楽家の老夫婦と2、3度尋ねてきた娘 買い物を運び上げるのを手伝ってくれるアパルトマンの管理人位。 ほとんどが介護の実際と介護をしながら交わされる夫婦の会話、娘との会話。 うまく説明できないけれど、西洋人の会話は本当に個人と個人の会話(なんか変な表現) ということが、部屋の椅子の配置からも良くわかるように思えた。 この悲しい結末の物語が「愛、アムール」なのか・・・・ 「愛ゆえに」妻がもっと壊れてしまう前に楽にしてあげようとして 夫は衝撃的な行動にでたのかも知れない。 最後の場面で妻の幻とともに家を出て行くシーンで 「ああ、妻にとっても良かったことなのだ」とほっとする思いがした。 老老介護の問題は私たちにとって現実に差し迫った事柄であり、身につまされる。 この物語では妻の尊厳を守るために、外部の人の協力はごくわずかに限り 閉じた世界で、夫がほとんどすべてを背負っていた。 その結果切羽詰って暴力にも発展することになる。 日本でもこれと似たようなケースは時々マスコミに取り上げられているが ほとんどの場合精神的肉体的に追い詰められた結果、ということになっている。 外面上はそう見えていても、この映画のように「愛」ゆえにということも 中にはあるのかもしれない。 私ならもっと他人の助けを頼みたい。(経済が許せば) 幸せな終末を迎える人もいる一方、不本意ながら病を得、思い通りにならない人もいるだろう。 人間である以上誰しも避けて通ることのできない「老い」と「死」に 目をそむけず向かい合いなさいということを、突きつけられているような映画でした。 それがただの過酷な現実だけではなく、願わくばそこに「愛」や「アムール」を感じられたなら・・・ 「愛、アムール」 2012年フランス・ドイツ・オーストリア 監督・脚本 ミヒャエル・ハネケ ジャン=ルイ・トランティニヤン(1930年~) エマニュエル・りヴァ(1927年~) 2012年カンヌ国際映画祭パルムドール 2013年アカデミー賞外国映画賞(オーストリア代表) 二人の俳優たちの演技はすばらしかったです。 二人ともこの映画で数々の賞を受賞しています。
by andantin
| 2013-05-19 12:06
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